ENJOY  EZO Trip.私の故郷、旅しませんか。
柏田 淳さん #03

建築家

柏田 淳さん

人気店を巡り、故郷を再発見。音更から鹿追、そして上士幌町の旅。出会う旅、話す旅で、故郷がまた恋しくなる。

柏田さんが生まれたのは、十勝平野のほぼ中央にある音更町。
小学1年生まで過ごし転居した。
しかしご両親とも隣町の鹿追町出身。
今も祖父、親戚が暮らしているため、しばしば足を運ぶ。
そんな縁のある町をあらためて旅してみたいと、気になる場所を訪ねた。

 生まれ育った音更町は近年都市化が急速に進み、柏田さんが住んでいた場所には今、アパートが建っている。庭で泥だらけになって遊んでいた子どもの頃の思い出はいろいろあっても、当時の町の面影はかなり薄れてきているという。折を見て母親の実家がある鹿追町を訪れ、祖父や親戚に会いに行く。両親や兄弟とともに慣れた道を走り、十勝の大地を踏む。豚丼は家で食べるものだという十勝のDNAは受け継いでいるものの、今の柏田さんにとってこの地は、故郷という想いよりも祖父の暮らす地という意味合いが強くなっているのだ。そんな彼が今回最初に訪ねたいと思ったのが十勝ならではの風景ともいえる、美しい白樺が立ち並ぶ場所だ。「生家には広い庭があって、もちろん白樺の木もありました。父がどこからか持ってきた土管を埋め、土を盛り、トンネルをつくってくれて。近所の子どもたちが集まる、楽しい庭でした」と話し出す。白樺を見ていると、そんな幼い日々のことが思い出され、あらためてこの木が身近な存在であることを感じたと言う。
 隣町の鹿追町で訪ねたのは、母方の祖父の家がすぐそばだと言う『パティスリーロク』。真っすぐな道を走りながら、そこへ向かう間に見えた景色。それは遮るものが何もなく広がっている畑の向こうに見える、十勝平野の地平線。「小さい頃のことを思うと必ず一緒に思い出されるのがあの風景です」と車窓から目を輝かせる。彼の仕事は、真っさらな土地に、設計図を引いて、人々が笑顔で集う場をつくること。雄大な十勝平野に育まれた感性がそこに生きているように思える。
 通っていた幼稚園のすぐ近くにある『カフェジョウロ』は、柏田さんの好きなスープカレーで人気のお店。築60年の古民家を一年がかりで改築したということで、その建物のスタイルや改築時のエピソードなど、店主・中山さんと話が弾む。カフェ文化がまだまだ育っていないという土地柄に、アートイベントを行うなどの提案もした。同じように農家の家を譲り受けた『無漏路』では、細かな手作業でつくられた欄間の木工細工や各所のつくりをつぶさに観察。十勝管内には、まだまだ農家の家や倉庫が数多く残っていて、活用の余地があるのではという話も聞く。もう一軒、縁の地とは少し離れているが気になっていたお店が上士幌町の『ピーコックス』だ。まさに本州の人が思っている北海道のイメージそのものという、直線道路を走ると見えてくるピーコックス=クジャクがデザインされたサイン。車が近づくと、白髪のボブヘアがチャーミングな店主・玉池さんが迎えてくれた。どの店に行っても店主と話す柏田さん。ここでは、山ぶどうがたわわに実るパーゴラの下で、材料となるフルーツから手作りという焼き菓子を味わいながら、しばしおしゃべりを楽しんだ。旅の最後に「訪ねた店、それぞれにいい空気が流れていて、時間がゆっくりと流れているように感じました。途中で自分も昔はそうだったなと、懐かしく思いながら。次にこちらに来る時は祖父母の家から足を伸ばして、今回旅した場所はもちろん、さらにいろいろな出会いを楽しみたいと思います」と話した柏田さん。広大な十勝には、まだまだたくさんの魅力と出会いが存在しているはずだ。

EZO裏バナシ

  • 建築家という仕事柄、建物はもちろん、自然の中でもそのものの細かな部分に目がいく柏田さん。

  • 旅の間も彼の目線で切り取ったたくさんの写真を撮影し、その視点の豊かさが印象的だった。

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